観戦レポート 20200926 ムエタイ

”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。

2020年9月最終週は、ビッグマッチが多かったですね。

...日本中が注目していた神童の試合には触れてません(笑)。

センマニー vs. タワンチャイ

このカードは、以前の投稿でも触れていたので続報的に書いてます。

昨年2回闘って、まったく違う結果になった興味深い組合せでした。

首相撲の展開がほぼゼロという、タイでは珍しい試合かもしれません。

そのぶん、見やすいのでぜひ、という思いで書いてみます。

1勝1敗で、3度目がすぐに組まれなかった理由は判りませんが、今回実現したわけです。

今回も、前2試合とは異なった展開になりました。

Covid-19対応の一部として、タイでは減量負荷を減らすために通常の階級よりも重い契約体重で試合が組まれることが多くなっています。

今回の試合もそうなり、2人とも前回よりも何キロか重いわけですが、タワンチャイは最近増量しているのか、絞れていても体格が優位に見えました。

それを意識したのかは判りませんが、センマニーは蹴り合いは捨ててパンチ勝負に行っています。

最初からワイドスタンスで構えて、出入りを速くしてパンチを当てたいのですが、タワンチャイはそれを許しません。

特に、得意のミドルキックや前蹴りではなく、パンチを使ってセンマニーを退かざるをえなくしています。

アマチュアボクシングの試合も経験したとの話も聞きますが、前回までと違った武器を身につけていたということです。

サウスポー同士なので、右フックからの左ストレートのコンビネーションは、「当たれば終わる」感が画面越しにも伝わります。

しかしながら、2Rにセンマニーが距離を詰めて肘を打ち下ろし、タワンチャイの頭をカットします。

背の高いタワンチャイに、センマニーはタイミングを測って飛び込んで打ってます。

パンチはかわしているタワンチャイが、どうして肘打ちをもらっているのか?

という疑問は浮かぶと思います。

打撃格闘技をされている方なら、似たような経験はあるかもしれません。

小野なりの回答としては、「タイミングと軌道が違うから」と思っています。

パンチが1のリズムなら(普通は)、肘打ちは1もあれば2も3もありうる技です。

遠間から肘打ちを打つ場合、まず踏み込んで距離を潰すという1動作が加わります。

動作が増えるなら読みやすいのでは?

と思われるかもしれませんが、逆に次の動きが判らない詰め方には反応しづらいところもあります。

そして詰めてしまえば、近距離からの攻撃は当然かわしづらくなります。

また、肘打ちはパンチに比べて様々な軌道で打てる技でもあります。

極論すれば肩の可動域ぶんだけ軌道があります。

ガードを固めていても、その隙間を狙えますし、組み際やパンチに合わせるなどすれば、なお反応しづらい攻撃になります。

肘打ちは、難しい技術ではありますが、使えるととても有用な武器になりますね。

長々とセンマニーの肘打ちを解説しましたが、それはムエタイの試合において肘打ちが多用される理由は上記の通りだと思っているからと、肘なしルールと肘ありルールとの差は、これだけ大きいのだということをご理解いただきたいからです。

試合に戻ります。

しかし、そのあとにタワンチャイのパンチテクニックが光りました。

右フェイントを入れつつ、それまでとは逆の左ストレート→右フックをきれいにヒットさせてダウンを奪います。

この試合のハイライトになりました。

小野が現役選手だった頃、当時新日本キックボクシング協会のウェルター級チャンピオンだった、現9Packジム会長の北沢勝さんに指導していただいたことを思い出しました。

ミットトレーニングで、フック→ストレートのコンビを打った後、逆のストレート→フックを打つ練習をしたことがあります。

「先に強いストレートを見せておくと、相手はそれを意識する。だから次はその意識させたストレートをいきなりついておけば、フックが当たりやすくなる」と説明された記憶があります。

※北沢会長、記憶違ってたらすみません。(^_^;)

目からウロコでしたね。北沢さんもパンチのコンビネーションで何人も倒しているので、実践していたのだと思います。

タワンチャイは、まさにそのパターンを実行したわけです。

コンビネーションのパターンを刷り込んでおいて、逆を突く。

しかも、左ストレートの伸びやキレは充分警戒させておいたため、効果は絶大でした。

その後、追い上げたいセンマニーと、出血がひどくなったタワンチャイの一進一退の攻防が続きますが、タワンチャイの上手さが光り、5Rはお互いに「勝負あり」の雰囲気で試合終了しました。

5Rにはタワンチャイの出血も止まっていたように見えましたが、後から傷口の写真を見るとかなり深かったようです。

どうやって止めたのかな? と不思議ではあります。

もちろんタワンチャイの判定勝ち。

日本だと、KO決着ありきですが、これだけ面白い判定決着も、ムエタイではたくさんあります。

そんなことを伝えたくて、書いてみました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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