あけましておめでとうございます。
”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。
珍しくボクシングのレポートです。
しかも、まだ書いてないキックボクシングの試合もあるなあと思いつつも、この試合はとても興味深かったので差し込みました。
(^_^;)
世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級タイトルマッチとして行われたこの試合、戦前の予想はかなり混戦模様でした。
およそ10年、日本ボクシング軽量級のトップランナーであり続ける一翔と、高校生の頃から天才の呼び声も高く、海外メディアからは”モンスター”井上尚弥に次ぐ評価を受けていると言われる恒成。
勝負事は水物ですし、相性もあるのでボクシング有識者の間でも五分五分という観方が大半だったようです。
ちなみに、小野は正直に言いますが恒成が押し切って判定勝ちかなと思っていました。
大ハズレです(^_^;)
恒成が田口良一を押し切った試合はそのポテンシャルの高さを証明したと思いましたし、一翔の前戦、一年前の試合は、苦しい逆転劇と映っていたからです。
結果は皆さん既にご存じのように、8RTKOで一翔の勝利となりました。

序盤から攻め込んでペースを取ろうとしたのは、やはり若い恒成。
対する一翔はガードをしっかり固め、恒成の打ち終わりなど要所で軽いパンチを「当てる」ことにフォーカスしていたように観えました。
一翔からすると「俺のフィールドに入って来いよ」みたいな感じというか、誘いこんでいるような。
それでも強打で押し込んでいく恒成が、一見優勢にも見える展開が続きます(実際の採点は一翔に流れていたようですが)。
3~4Rくらいから、恒成の強打をブロックしつつ、一翔は前に出て身体でプレスする場面を作りました。
対する恒成は退きながらほぼ全弾強いパンチを高速コンビネーションで打ち続けます。
これはこれで凄い見せ場でしたが、一翔はギリギリでクリーンヒットを許しません。
逆に小さくヒットを重ねて恒成に鼻血を出させていました。
特に注目すべきは、「軽いけど重いパンチ」ではないでしょうか。
...何言ってんのという話ですけれども。(^_^;)
パンチはハンドスピードとフットワークだけで打つものではないんだということを、一翔は教えてくれています。
恒成の「ガツン」と当てる強力なジャブは印象はいい上にダメージも与えられます。
しかし、一翔の重心移動を最大限活かしつつ、モーションが小さいジャブは、身体の重さを拳に乗せて、恒成の次のパンチを牽制する意味も含め、試合をコントロールする役割を果たしていたのではないでしょうか。
このパンチを観ていて思い出したのは、一翔がアマプロを通じて連敗しているアムナット・ルエンロンでした。
KOパンチャーとは呼べないものの、腕の長さを最大限に活かして「相手を崩す」パンチを上手く当てるボクサーです。
最近では、タイ国内の試合で、”チョコラティート” ローマン・ゴンサレスに2連勝したスリサケットにも中盤まで上手くパンチを当ててリードしていましたね。
一翔は2014年に対戦し、3階級制覇となるフライ級のタイトル奪取を阻まれています。
厳密に見返したわけではありませんが、一翔がイケイケの若い時期に、アムナットの「当てる」パンチに試合をコントロールされ、捕まえきれずに試合終了した覚えがあります。
まるで今回の恒成との試合では立場を逆にしたような印象です。
もちろん、一翔とアムナットではタイプは全く違いますが、軽くても相手をコントロールできるパンチで試合を組み立てたという意味で、一翔のプロ初黒星となった試合を想起しました。
更には、最近のボクシング判定は、「大きくて強い1発」よりも「軽くて正確な3発」が評価されやすい傾向があるようにも思われますので、そこまで計算していたとしたら、一翔陣営の作戦はピッタリはまっていたことになります。
対する恒成は退がる場面もありますが、やはり強打のコンビネーションで反撃します。
そこで左フックのカウンター一閃。
一翔がダウンを奪ったのは5Rでした。
軽めの(重心移動で打っている)右ストレートからの返しでもありました。
結局はこの左フックカウンターが勝負を決めたわけですが、このパンチは一翔が若い時から得意にしているパターンです。
時にはボディへも含めて、何人もマットに沈めてきている「必殺技」ですね。
しかし今回は、これまでとは違うなあと思いました。
相手が打ってくるところに合わせる、ある意味単純なカウンターではなく、先に「抑えの」右ストレートを出しておいて、それへの反撃に合わせるカウンター。
簡単に書いちゃいましたがムチャクチャなハイレベル技術ですよ。
(^_^;)
カウンター自体ハイレベルですが、単純に打ってくるのに合わせるのはかなり困難です(それができる天才もいますけども)。
だから、「打たせて打つ」戦略的なカウンターが重要になるわけですね。
一翔が凄いのは、恒成のような天才的なパンチャー相手に、それをやってのけたことだと思います。
レフェリーが8Rでぐらついた恒成をストップしたのは正しい判断でした。
最初のダウンの後、「倒すしかない!」と言って更に前に出ようとした恒成陣営と、「出すぎずに観ろ」と言った一翔陣営との差は明確でした(TV解説によります)。
更に2度目のダウンを同じパターンで喫したことで、恒成は単純に4ポイントのリードを相手に許したことになります。
恒成は戦術以前に、倒しにいかないといけない状況に追い込まれていたわけですが、タイミングを完全に読み切っていた一翔からすれば、恒成は「積み」でした。
いったんアウトボクシングしてペースを取り直す戦略も、恒成陣営は取りえたはずですが、恒成自身の性格や、チャレンジャーとして置かれていた状況などを考えるとやむなしかもしれません。
一翔はしっかりしたブロックを中心にしたディフェンス技術で恒成を追い込み、手を出させてはカウンターを正確に当ててゲームセットに持ち込みました。
パンチの強さ・速さでは恒成が優っていたのは戦前の予想通り、しかし被弾が多いのもまた予想通りでしたし、ある意味では剛速球一本やりの単調なボクシングになってしまったことも、一翔からするとプランを遂行しやすくなったものと思われます。
キレのいいカウンターに加えて、経験値からパンチのバリエーションや戦術を身に着けた一翔は紛れもなく同階級のトップレベルにあることを証明しました。
敗れた恒成も、弱点は曝したかもしれませんが、ポテンシャルは「パウンド・フォー・パウンド」手前とも言われる評価は、さほど下げる必要はないと思います。
ローマン・ゴンサレスとフアン・フランシスコ・エストラーダの統一戦も予定されている階級で、2人の日本人ボクサーも存在感を示したと言えます。
井上尚弥のバンタムだけでなく、スーパーフライ級からも目が離せませんね。
お読みいただきありがとうございました。