”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。
今回は、小野がセコンドを務める試合が間近になりましたので、煽り的に選手の昨秋2試合をレポートします。
2022年3月12日(土)KNOCK OUT 2022 vol.2
KNOCK OUT-RED スーパーフライ級 3分3R・延長1R
松﨑 公則(Struggle) vs. 阿部 晴翔(はるか)(チーム・タイガーホーク)
REBEL・J-NETで合計4本のベルトを巻いた松﨑選手のファイナルマッチに、晴翔が抜擢されました。
松﨑選手はプロデビューが33歳。
「遅咲き」どころの話ではありません。小野が現役引退した年齢からプロのリングに上がり、結果を残してきた鉄人です。
近年は、ジュニア上がりの若い選手のスピードとテクニックに苦戦を強いられる場面も増えました。
大﨑孔稀、白幡裕星、花岡竜に、いずれも敗れはしたものの、最後まで倒れることを拒否し、巨大な壁として立ちふさがる姿には、言葉を奪われてしまいましたね。
リスペクトしかない選手に、最後の相手として指名してもらった以上、完璧な最期を遂げてもらうしかありません。
阿部晴翔は東北地方の大会でプロデビュー後、仙台の鷹虎ジムに移籍しましたが、中央では連敗。
やっと1勝を挙げた試合を含め、2021年秋の2試合をコーナー目線でレポートします。
21歳と若く、技術力も確か、かつ抜群のソリッドパンチャーなので、ぜひ注目してやってください。
20210920 JAPAN KICKBOXING INNOVATION Resistance-3
第2試合 ジム対抗戦 51.5kg契約 3分3R
スダ 456(じごろ)(BRING IT ONパラエストラAKK)vs.阿部 晴翔(はるか)(チーム・タイガーホーク)
相手のスダは元ホストとの経歴を持ち、前日会見で本人も言うように、けして器用ではないスタイルで、無骨に削り合いを制するタイプの選手と認識していました。
晴翔にとってはいつものことですが、適正階級より重い契約ウェイトでの試合。
スダは総合系のジム所属なことも関係しているのでしょうか、体幹・フィジカルが強い印象でしたので、おそらく前に出てきて強めにプレッシャーをかけると踏んでいました。
こちらは、そこに右クロスを合わせたい、と。
1R、その予想をはずされてのスタートです。
スダはやや遠間の距離を保ちながら、「当てるだけ」の軽い攻撃を重ねてきます。
晴翔が強めのローを蹴っても、返すのは軽めのミドルですが、その代わり手数ではリードします。
この立ち上がりは、晴翔にとってもコーナーにとってもやりづらい雰囲気になってしまいました。
当たっても倒されない攻撃ながら、そのぶん警戒心が弱くなりヒットを許してしまう展開になったからです。
晴翔は、勝つときは自分の攻撃の勢いで相手を飲み込んでいくタイプですが、相手が攻撃的でないとリズムが合いません。
そしてスダは接近すると首相撲。
やはりここでもガツガツは来ずに、軽くヒザを入れながら有利なポジション取りでブレイクまでキープという印象です。
まるで、晴翔の技量を鑑定しているような印象でした。
なんとなくイヤな展開だなという予感は現実になります。
2R、ギアを上げたい晴翔ですが、どうしてもスダの緩いペースでの展開が続き、組まれると体力差もあり、崩されてしまいます。
その中で、どうしても晴翔には焦りが生まれます。
そしてプレスを強めようとする中で、スダのハイキックがクリーンヒットします。
これもけして強く蹴ったわけではなく、タイミングを上手く合わせた蹴りでしたが、それだけに反応しづらい攻撃でした。
ダメージは大きくなかったものの、2ポイントのビハインドが確定した3R、晴翔はやっと積極的に前に出ます。
結果としてヒジ打ちでのカットを許しますが、状況的に折り込み済みです。
スダはこちらの狙いの右クロスをもらうシーンも出てきますが、芯をはずしてダメージを最小限にしつつ、やはり組んで崩す展開に持ち込みます。
結果、判定は当然スダに上がりました。
この試合、晴翔もコーナーも大きな学びにつながったと思います。
単純な殴る蹴るの技量なら、ひいき目を差し引きしても晴翔のほうが優っていると思います。
しかし、まるでレン・チューン(強く蹴らずにタイミングだけを測るスパーリング)のようなスダの攻撃は、逆に突然強いパンチや蹴りにつながる可能性を想像させられてしまいます。結果として晴翔は思い切り飛び込めないことになりました。
そして相手の弱い首相撲で自身のリードはキープしていく。
結果としてペースを崩された晴翔は、実力差以上の差をつけられての敗戦となりました。
スダの、まるで達人芸のような闘い方は、目から鱗が落ちるところがありましたね。
失礼を承知で言えば、弱者が強者に勝ちうる戦略だとも言えます。
また、単純に晴翔の構え方や首相撲の強化など、課題を可視化してくれた試合でした。
ちなみに、スダ選手とは試合後にも話をしましたが、とてもナイスガイでした。
YouTubeなどでも発信している通り、考えて練習して強くなった選手だと思います。
スダ選手も、晴翔の翌日にタイトルマッチを控えています。
小野が言うことではありませんが、こちらも応援よろしくお願いします。

20211121 ジャパンキックボクシング協会『KICK Insist11』
第7試合 Wセミファイナル 51kg契約 3分3R
細田昇吾(ビクトリージム/スックワンキントーンフライ級王者)vs.阿部晴翔(チームタイガーホーク/WMC日本フライ級3位)
前戦も含め、中央進出から勝ち星のない晴翔ですが、なぜかタイトルホルダーとのオファーとなりました。
細田も前戦でKO負けしているため、”再起戦”の色合いも強かったのかもしれません。
露骨な言い方をすれば「アンダードッグ」かませ犬的な扱いと勘ぐったのは、実感としてはありました。
だからと言って断る選択肢はありません。
正直、連敗中なのでもう少し勝つ確率が高そうな相手、かつ適正階級で...とか考えてしまいますが、断れば次のオファーはないかもしれませんし、タイトルホルダーに相手のホームリングで勝てば一気にひっくり返せます。
これまでのレポートでも何度かご登場いただいた、元新日本キックボクシング協会フェザー級王者・大野信一朗さんは、日めくりカレンダーを作りたいほど名言をお持ちです。
そのひとつが
「オファーを断れるほどの偉い選手じゃないだろう」
です。
若い戦績の浅い選手は、相手を選ぶなということです。
もちろん状況次第ではあるものの、基本はその通りでしょう。
特に晴翔のように地方在住選手の場合、中央のリングに”招聘”されるくらいの存在価値を見せていかないといけません。
これまでも、名高・エイワスポーツジムをはじめ、明らかに格上の選手とも闘ってきました。
もちろん相手になりませんでしたが、そうやって経験値を積み上げながら、トンネルの出口を探し続けてきたわけです。
前戦もそうでしたが、今回もテーマは「相手より自分」でした。
特に、”構え”を修正できるかが大きなポイントでした。
一般論として、例えば強いパンチを持っているとか、ハイキックを当てるのが上手いとか、そういった目立つ点に目が行きがちですが、強い選手は”構え”ができていますね。
いい構えとは何か?
絶対的な正解はありません。
効果的に攻めることができて、効果的に守れることができるということだけです。
自身に合った、そんな構え方ができていれば、それだけで技量の半分はできていると言ってもいいんじゃないかなと、個人的には考えています。
晴翔は、今回のようなフライ級契約ならば、実質減量が要らない体格です。
要するに、小さいです。
でも強い。
したがって
- 普段の練習から、全部の相手が自分より大きい。
- 性格的に攻撃主体で前に出たがり。
- ジムでは一番の技量と実力がある。
という条件が揃ってのことなのでしょう。
構えが雑な印象は以前から感じていましたし、試合ごとにアドバイスをしてきましたが、なかなか直りませんでした。
相手の顔を見る派なので、見上げるかたちになり顔が上がってしまい、それにつられて手の位置は低くなります。
攻撃的な選手にはありがちなことですが、多くの敗戦で倒されていることと、構えができていないことは無関係ではないでしょう。
相手の顔(目)を見る派、見ない派の件は以前にも触れたことがあります。
どちらが正しいということはありませんし、どちらにも相応のメリットデメリットがあります。
小野は師匠である飯村健一先生から教わった通り、「腹を中心に全体をぼんやり見る」ようにしています。
しかしどこを見るかよりも、構え方自体として大事なポイントを教わりました。
「手(ガード)を上げるのではなく、構えに自分の頭を入れる」こと。
自然にアゴが引かれ、肩が下がり手が上がります。
肩をすくめると、アゴが上がって手が下がりますよね?
その逆です。
今回は、その点を徹底して意識してもらい、試合当日のアップでもほとんどそれしか言いませんでした。
試合が始まっても、「頭の入った」構えのまま細田にプレッシャーをかけることができていました。
前回のスダ戦と、今回の細田戦の構えを比べると、かなり違いますね。
前戦の悔しい敗戦あってのことでもあり、スダ選手に感謝したいところです。
1R、お互いにロー(と言うかカーフキック)を蹴っての立ち上がりです。
何となくという程度の感覚ですが、細田はやや勝負を急いでいるように思えました。
カーフも、晴翔に蹴られて慌てて蹴り返したように見えましたし(様子見のローではなく、一撃目でダメージを与える攻撃です)、いきなりハイキックを狙い、ヒジを狙います(倒れなくともカットアウトできる)。
対する晴翔。
格上の攻撃にも怯まず、コツコツとカーフを蹴って崩していきます。
良かったのは、ひとつカーフキックが当たったところで、同じリズムでミドルキックを蹴ったりパンチに変化したりと、攻撃を散らしたことです。
ひとついい攻撃が当たれば、相手はその攻撃を警戒します。
これを、比喩的な表現で「穴を開ける」と言ったりします。
ひとつ穴を開けたら、次はその穴を狙うふりをして(それを「エサを撒く」なんて例えたりもします)別の場所に違う穴を開ける。
上手くいけば、相手は複数の穴をふさがないといけなくなり、仕事が増えます。
その展開が続けば、結果としてどこかの穴を大きくして、自身に有利な展開で試合を運べるわけです。
こういう蘊蓄的な書き方をすると簡単に感じますが、実際に相手を前にして実行するのは難しいことです。
技術的にも、メンタル面でも。
晴翔が攻撃を散らしながら試合のペースを取りにいった効果は、予想よりも早く出ました。
1R終盤、スダに通じなかった(^_^;)、右のクロスがクリーンヒットし、細田がたたらを踏みます。
そしてコーナーに詰めての左フックでダウンを奪いました。
ここで初回終了。
このときコーナーは何を考えていたかと言うと。
...予想より上手くいきすぎて、逆に焦っていました(笑)。(^_^;)
インターバルで座らないのを知っているのにイスを出してしまってますね。
指示としては「落ち着いて、またイチから試合を組み立てるつもりで」と言いましたが、本音では「ワンダウンのリードを守って、後は塩漬けでもいいから何とか勝ってくれ」と思っていました。
そして2R。
このRも晴翔はカーフで初回に開けた穴をもう一度狙うところから始めます。
そして細田もやはり同じカーフを蹴り返します。
ややゆったりしたテンポになったかと思った次の瞬間、晴翔のショートストレートがクリーンヒットしました。
腰砕けになる細田。
そして、画像で判るように晴翔は瞬間的に右手をガードに戻していますね。
落ち着いていました。
これで、細田はカーフとパンチ、2つの穴に対処しなくてはならなくなります。
実際、この後のシーンではカーフキックをディフェンスできずに直撃されていました。
晴翔が手を下げず、目線も変えずに下を蹴っているのが判ります。
これは細田は避けられません。
結果、その一撃はフィニッシュに直結します。
再度パンチの連打でぐらつかせてからのカーフキックで、細田が倒れます。
すぐに立てないのを見たレフェリーがダウン宣告すると同時に、細田のコーナーからタオルが投入され、晴翔のTKO勝ちとなりました。
頭部のダメージに加え、支えとなる軸足が効かなくなっていましたので、妥当な判断だと思います。
この試合で、中央進出後の初勝利を収めた晴翔。
連敗にも腐らず努力を続けたことが報われた瞬間でした。
敗者が努力を怠っているわけではありませんので、いわゆる「勝負は時の運」の要素も大きいのは確かです。
リングの神様が、この日は晴翔の努力に応えてくれたのだと、そんな風にも感じました。
そして、「塩漬けでもいいから勝って」と願ったコーナーマンの浅はかさを、だいぶ恥じ入った次第です。
(^_^;)
選手が、セコンドの期待と予想を裏切って超えていく瞬間は、何物にも代えがたいものです。
勢いあまって、Twitterに「コカインより気持ちいい」とか投稿してしまいましたが、もちろん小野はアルコール以外の薬物には手を出したことはありません(笑)。
(^_^;)
さて、冒頭に書いた通り、晴翔の次戦は2022/3/12(土)のKNOCKOUT、松﨑公則戦です。
トンネルを抜けた晴翔のさらなる成長と、コーナーマンとしての小野の成長を見せられればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。