観戦レポート 20201011 RISE GIRLS POWER QUEEN of QUEENS

”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。

今回はキックボクシング。

第8試合 2020RISE GIRLS POWER QUEEN of QUEENS 一回戦 3分3R延長1R

百 花(魁塾) vs. 大倉 萌(大道塾吉祥寺支部)

大倉は大道塾吉祥寺支部の直系の後輩にあたり、小野も一緒に練習していましたので、客観的に書きづらいのですが。

(^_^;)

普段は「もえちゃん」とか呼んでますけど(道場生みんな同じ。愛されキャラですよ)、客観性を担保する風に「大倉」として、ちょっとテーマを持たせて書こうと思います。

結果は、おそらくこの投稿を読んでいる方はご存じだと思います。

本戦判定1-1ドロー、延長判定2-1の接戦ながら、百花勝利となりました。

この評価の是非を問うことには意味はありません。

参戦した団体の基準が正しいと考えるしかありませんし、もっと言えば、KOや圧倒的な内容で試合を終わらせて、勝敗を人の手に渡さなければいいだけのことです。

小野はAbemaTV越しに応援していましたが、本戦は「ドローありそう」と思いましたし、延長は負けたと思いました。

会場で応援していた道場の仲間たちや、オンライン応援のメンバーからも、同様の感想を聞いています。

・・・後輩たちに圧力はかけてませんよ(笑)。

(^_^;)

負けたと思う理由も同じでした。

特に延長Rでの手数で劣っていたと。

後から本人に、手数を増やさなかった理由を聞きました。

ざっくり言えば「あの闘い方で勝っていると判断した」ということです。

ジャッジと観客(小野を含む)の評価とは異なっていたわけです。

そして、チーフセコンドである飯村健一支部長(小野にとっても師匠です。ご存じのように、大道塾のみならず、打撃技術においてはムエタイ/キックボクシング/総合の各界から高い評価を得ています)。

やはり、劣勢認識はなかったようです。

この食い違いはなぜ生まれたのか?

もちろん真相は解りません。しかし、これを本稿のテーマとしてみます。

まず試合展開をおさらいしておきましょう。

1R、大倉はティープ(ムエタイの前蹴り)のフェイント的に足を挙げながらプレスし、実際に百花の入り際には上手くティープを合わせてバランスを崩します

自分からは高めのミドルキック(よくハイキックと実況されますが、頭を蹴るつもりはなく、スネでカットされづらい腕から肩を狙って蹴っているだけです)をタイミングよくヒット。

百花も飛び込むスピードと速いパンチで反撃しますが、大倉が距離感をつかんだ感じで終わります。

大倉の試合開始前までの、リリースされている情報としては「ベンチプレス100kg、ハーフデッドリフト300kg(ホントは330kg)のフィジカル」「空道という空手・柔道のミックス的な競技のチャンピオン」というくらいでしたので、そのファイティングスタイルを観て「え、ムエタイ?」と驚いた方も多かったようです。

...すみません、空道の選手の中では少数派スタイルです(笑)。

(^_^;)

解説のお二人の話でも、「ムエタイ経験あるんですかね?」 神山P「先生がムエタイベースなんじゃないですかね」というくだりがありましたが、それはその通りです!(笑)

ともかく、技術力の高さを充分に見せつけた立ち上がりでしたね。

2R、大倉の距離感掌握レベルが上がります。ミドル、ロー、ティープと足技を的確に当てつつ、百花のリターンパンチも見切れているようで、一度クロスカウンターを合わせようとさえしていました。

蹴ってダメージを与えられたわけではないのですが、ペースはつかんでいたと思います。

しかし、その「ダメージを与えられたわけではない」ことが、後半戦に響くことになります。

3R、百花が積極的に距離を詰めてパンチを振るいます。

ミドルキックもティープも、腕や身体で我慢して受けてリターンを返すパターンに切り替えました。

...「切り替えました」と書きましたが、ある意味では作戦ではなく「腹をくくった」レベルのことかもしれません。

例えば大倉の右ミドルが、受けた腕がパンチを打てないレベルになるほど強ければ取れない戦術でした。

それが「ダメージを与えられたわけではない」ことの後半戦への影響です。

百花は出足の速さを活かし、先手でもパンチを飛び込みで当て、蹴られてもすぐリターンを返し、結果として数回クリーンヒットを奪いました。

これは勝負を分けたポイントだったと、小野は思っています。

ダメージ重視のジャッジをするならば、パンチのヒット数が単純に評価につながるからです。

対する大倉。

百花の「拳の硬さ」は感じていたようです。

パンチの打ち合いを避け、離れて蹴る戦術を取ったわけですが、それが結果として裏目に出ました。

そして本戦終了。

ここで前提となるジャッジの基準について、一般論として押さえておきます。

ムエタイ : 試合のコントロールや美しさを重視します。よって、強打を当ててダメージを与えたほうよりも、大きくて美しいフォームの攻撃を当てて相手のバランスを崩したほうが有利。

キックボクシング : ダメージとアグレッシブさを重視します。よって、手っ取り早くダメージを与えられるパンチの比重が大きくなります(ヒジ無しならなおさら)。

解りやすくするために暴力的に対比させましたが、もちろん一概に言えないところはあります。

あくまでざっくりとした傾向の話です。

この基準に照らしてみると、試合をコントロールしてバランスを崩させた大倉と、パンチを当てた百花のどちらを評価するかと言うと、日本のキックボクシングであるRISEでは百花よりになるでしょう。

それでもジャッジ三者三様のドローだったので、試合全体を通してみると大倉のペースだったことになります。

しかしながら、両者ともに「様子見」の序盤戦(1R)は、ジャッジとしては差を付けづらいところです。

逆に、お互いが暖まって自分のペースを取ろうとしている終盤戦(3R)は、差を付けやすいと考えられます。

そう考えると、3Rにパンチのヒットを増やした百花が、若干有利な印象で延長に突入したはずです。

延長戦も、基本的に3Rと同じ展開でした。

強いて言えば、大倉のティープがヒットしなくなりました。

百花が、基本は前に出つつ、ティープのそぶりを見るとバックステップでかわし、その後に飛び込んでパンチをまとめてきたからです。

クリーンヒットは少ないものの、手数では百花の印象がいい展開でした。

大倉もミドルだけではなく、蹴り終わりにパンチを混ぜたりしましたが、手数での劣勢は否めません。

それでも相変わらず高めのミドルキックはクリーンヒットします。

お互いがお互いのスタイルを貫いた試合だとも言えますね。

延長終了し、前述のように2-1判定で百花の勝利が確定しました。

さて、本稿のテーマは「なぜ、ジャッジと選手/セコンドで試合の評価が食い違ったのか」でした。

推測まじりです。

まずは大倉の攻撃(ミドルキック)が、思い通りに当たっていたこと。

蹴りでリズムを作った試合だったので、ここを変える必要を感じなかったのではないでしょうか。

小野も似たスタイルの選手でしたので、気持ちはよく解ります。

自分のやりたい攻撃がやりたいように当たっていると、気持ちよく闘えるのです。

時に、全体のバランスとしてどうなっているか見失うほど。

更に言えば、本人もセコンドも、そして身内である我々もですが、大倉の技術の確かさに対して、誰よりも評価していました。つまり、自信を持っていた。

その自信がある攻撃がヒットしている以上、戦術変更は考えられなかったのではないでしょうか。

更に更に言うと。

生観戦したことのある方、特に、リングサイドに近い席で観たことのある方なら解ると思いますが、生音はけっこう大きいですよね。

軽やかに見えるフットワークでさえ、リングをドンドンと踏み鳴らす音が響きますし、蹴りが身体に当たると、ちょっと驚くような大きい音がします。

近くにいると、倒されたり効かされたりしているわけではないパンチよりも、蹴りが身体に当たっているほうが強く印象に残ることはあります。

そのあたりが、食い違いを生んだのではないでしょうか。

しかしながら。

大倉はプロ、というよりもキックボクシングの試合自体2試合めだと言うことは、放送でもマスメディアでも取り上げられていました。

それだけではないのです。

ヒザの怪我によるおよそ2年間のブランク開けの復帰戦が1年前。

その直後にまったくルールの違うキックデビューをしたばかりだったのです。

ブランクの間、就職などさまざまな環境変化を経て、あのリングに立ち、時には笑顔を見せながら、堂々と闘いました

結果は間違っていたかもしれませんが、「勝っている」と戦況を捉えることもできています(普通ならそんなことを考える余裕もないはずです)。

これは驚くべきことだと思います。

神村プロデューサーには(この日の女子カードについては酷評していましたが)、大倉の「伸びしろ」を評価していただきました。

SNSでも、大倉の技術力に対して驚きを伴う高評価が目立ちました。

それでもあえて言います。

まだあんなもんじゃないんです、と。

リングで出せる力が実力である以上、今回の敗戦は実力不足だと認めるしかありませんが、ポテンシャルを出し切った試合でもありませんでした。

日々の練習でレベルを上げるのはもちろん、チャレンジャーとして全力を出し切ること、その覚悟が問われることになります。

まあ、sasoriと足して2で割ると、観ているほうも安心して勝てるんじゃないかなとか、半分冗談で考えたりします(笑)。

(^_^;)

次戦を楽しみに待ちましょう。

最後に、対戦相手の百花選手のガッツは賞賛に値します。

伊達にチャンピオンベルトを持っていないなと思いました。

トーナメントの準決勝では、やはり経験値で若手を振り切った紅絹と対戦します。

こちらも楽しみです。

お読みいただきありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました