観戦レポート 20201206 BOM WAVE03 ~ Get Over The COVID-19 ~

”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。

今回もムエタイの試合レポートです。

http://bom.tokyo/BOMwave03_02.pdf

Battle of MuayThai

略してBOM。

肘や首相撲の制限が少ない「ムエタイ」を前面押しにしているプロモーションで、タイで経験を積んでいる若い選手が多いことから注目してます。

PartⅡ 第6試合 -50kg 3分5R

竜哉・エイワスポーツジム vs. 阿部 秀虎

(公式YouTubeチャンネルにアップされたらリンク貼ります)

秀虎は10月のWAVE02に続いての参戦、小野も今回もセコンドとして参戦してきました。

今回の相手は竜哉・エイワスポーツジム

こちらもWAVE2に続いての参戦です。

前回の相手である名高と同じく、タイ/ラジャダムナンスタジアム認定チャンピオンです。

対する秀虎は戦績こそ振るいませんが、やはりタイで修行を積んだ技術と、小柄な体格からの想像を裏切るパンチ力が持ち味の選手。

仙台・鷹虎ジム所属のため、東京での試合の時にはサポートに入っています。

前回も驚きましたが、立て続けにチャンピオンと組まれたことは驚きを通り越して唖然としました。

今回もまた、賭けのあるタイはもちろん、日本ですら通常は組まれないくらい差がある組合せなのです。

試合後、竜哉と少し話しましたが、試合を受けてくれる相手がいないのが要因のようです。

今回の契約ウェイトである-50kgは、竜哉にとっても通常の階級より2kgほど重いのですが、それでも見つからないのでしょう。

地方ジムの駆け出しである秀虎は、オファーを断る立場ではありません。

鷹虎会長も本人も、覚悟の連戦でした。

今回もまた、前戦と近いプランでした。

実力差がある相手に、アップセットを起こすための方法は、当然ですがそんなにバリエーションがありません。

(^_^;)

・序盤は蹴り合いの距離をキープ

・竜哉はローキックが強いので、スルー(足を引いてかわす)

・そしてヒザでのカットを混ぜて、蹴りづらくさせる

・組みはあまり印象ないけど、前戦を観て仕掛けてくる可能性はある

・最終的には投げられて済めばOK

・ヒジヒザをもらわないために脚を効かせたディフェンスはしっかり

・3R以降になると、竜哉が焦れてくるはず

・カウンターが当たるチャンスが生まれるはず

そして試合開始です。

1R、立ち上がりの秀虎は丁寧に上記プランを遂行しました。

竜哉は、やはり強いローを振り抜いてきます。

秀虎はスルーして、高めで軽めのミドルを蹴ります。

これは、竜哉がキャッチしての攻撃も得意ではないかという、鷹虎会長の見立てを踏まえて、序盤を乗り越えたらキャッチさせてパンチを狙うことも考えていたので、布石としては良かったと思います。

竜哉はやはりロー。

秀虎がスルー。

このリズムは悪くないと思った矢先、竜哉は比較的大きいモーションからハイキックを振ってきました。

秀虎はスウェイで危なげなくかわしましたが、こちらとしては「もう少しローにこだわってほしいな」というのが本音でした。

(^_^;)

プランとしては、もう少しローキックを蹴ってもらって、焦れてもらうはずだったからです。

次の展開の中で、竜哉はミドルキックのような軌道からの右ハイキック一閃

不意を衝かれた秀虎は、直撃されてダウンします。

自コーナーのすぐ前で動けない秀虎を見て、立ててもタオルを投げたほうがいいと思い会長に声をかけようとした瞬間に、レフェリーがカウントを止めてTKOを宣告しました。

幸いすぐに意識も戻り、立ち上がることもできました。

実力差を考えると、結果としては仕方ない部分はあります。

しかし、そもそもその「実力差」とは具体的に何なのでしょうか?

実績は数字やベルトとして目に見えますが、その差はどこからくるものなのか。

この試合に限ったことではありませんが、鍵は「ストロングポイント」と「引き出し」にあります。

竜哉は前戦のリュウノスケ・ウォーワンチャイ戦でも強力なローキックでペースを握っていました。

ローキックは一撃KOこそ多くありませんが、5Rの試合の場合は特に後半戦への影響が大きい技です。

特に、後半戦でパンチで攻めたい秀虎からすると、脚が効かない状態になることは、逆転の可能性が削られていくことになりますので、警戒を強めざるをえないところです。

立ち上がりで丁寧にローを外す展開にしたのは、そのぐらい竜哉のローが強かったからです。

相手の強力な武器を上手くはずした立ち上がりの秀虎ですが、竜哉の凄いところは、自身の「必殺技」にこだわらずに、次の戦略に切り替えたところでしょう。

それも、ミドル軌道のフェイント気味のハイキックです。

一概には言えないものの、ローが得意な選手が出すイメージは少ないですね。

これまでの試合でも、もしかしたら出していたのかもしれませんが、こちらとしては予想外でした。

蹴り技の上手い竜哉ですから、それくらいはやってくると見越しておくべきでした。

ローを警戒されることを見越して、ハイでのKOもプランとして用意していたのかもしれません。

なぜか。

こちらも想定はしていましたが、名高が2RでKOした相手を、もっと早く倒そうとするのは同門のライバルとしては当然ですし(中継の解説で名高も言っていましたね)、そのためにはローにこだわらないほうがいいからです。

いずれにせよ、自分の得意な攻撃パターンが上手くいかない時に戦略を切り替えるのは、口で言うのは簡単ですが、相手が格下であるほど、実行するのは難しいことです。

プライドを賭けて、得意な技にこだわってしまうものだからです。

脱線しますが、ハイレベルな選手になると、いくら警戒されても得意技で決めてしまうこともあります。

2016年に今は亡き東京・ディファ有明で行われた「MuayThai Super Fight」。

こちらもムエタイにこだわったプロモーションです。

本場の強豪タイ人を呼んで、本物のムエタイを見せてくれますが、この年はタイのトップ中のトップの1人、スーパーレックが初来日し、ヤスユキと対戦しました。

試合開始時、スーパーレックは明らかにヤスユキをなめていました。

いきなりの右ハイキックや、ジャンプしての打ち下ろしヒジなど、早く勝負を決めてしまおうという感じがよく伝わってきました。

しかしながら、ヤスユキはそれらをかわし続け、試合のペースを握っているように見えました。

「これ、もしかしたらとんでもない番狂わせが...」という思いが頭をよぎりました。

が、会場がそんな雰囲気になった矢先の2R、スーパーレックはカウンターの右ハイキックでヤスユキをKOしたのです。

ホンモノの「必殺技」というのはこういうものなのかなと、ぞっとするような、感動するような、複雑な感情を持ったことを覚えています。

本題に戻り考えてみると、秀虎が仮にハイキックをかわしていたとしても、あるいはKOされずに試合続行できたとしても、竜哉も次の手としてやはりローで勝ちにきたかもしれません。

ハイキックを「エサ」として、また脚を狙うこともできるからです。

あるいは、ハイとローを織り交ぜた攻撃を捌いた先には、ヒジヒザがあるのかもしれません。

そこまでたどり着けなかった我々としては、竜哉の底は見えないままです。

竜哉は「ストロングポイント」であるローキックがあることで、相手を警戒させて注意を引きつけることがことができます。

そうなると、警戒網の外にある、他の技術、つまり「引き出し」が有効に使えます

今回はそれがハイキックでした。

更に、その引き出しが有効であれば、本来のストロングポイントも活きてくるという、好循環を生み出せる選手は強いですね。

「ストロングポイント」と「引き出し」は、どちらかひとつを持っている選手はたくさんいます。

ストロングポイントで言えば。

一発のパンチが強い。

組んだら強い。

ティープが上手い。

しかしそれだけでは、なかなか勝ち続けることは難しくなるのではと思います。

また、技術の引き出しが多く「なんでもできる」けど、あまり戦績につながらない「器用貧乏」型の選手もいますね。

技術の引き出しは多いに越したことはありませんが、それだけでは勝てません。

むしろファイトプランを定めにくくなることさえあるのではと思っています。

...白状すれば、現役時代の小野もそういうタイプの選手だったと思っています。

(^_^;)

重要なのは、「ストロングポイント」と「引き出し」のバランスなのだろうと思います。

以上、裏側レポートでした。

この後、大﨑孔稀選手と石井一成選手の試合も書く予定

本稿と近いテーマを切り口とするつもりです。

気長にお待ちください。

(^_^;)

お読みいただきありがとうございました。

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