RISE Dead or Alive -53kg トーナメント

”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。

ホントは本日5/16に行われるRISEonABEMAの大﨑兄弟の試合をレポートするつもりだったのですが、弟・孔稀の新型コロナウイルス感染に伴い、2人とも欠場となってしまいました。

今のところSNSなどを見る限り重症化はしていないようですが、一日も早い回復を祈ります。

そして、直前になって一貴と対戦予定だった志朗と、表題のトーナメント参戦が発表されていた石井一成とのエキシビジョンマッチが発表されました。

エキシとは言え、興味深いカードです。

単純に観たい組合せであることに加え、トーナメント前哨戦としても楽しめそうです。

そこで今日は、トーナメントがどのような展開になるかというポイントから、エキシをどう観るか考えてみます。

なので、いつもは後出しじゃんけんですが、珍しく戦前に書いています。

(^_^;)

と言っても、トーナメント優勝予想も勝敗予想もしませんので、悪しからずご了承ください。

m(_ _)m

もともと、セコンドの立場なら相手の分析から展開の予想を立ててプランを作りますが、観る立場のときは漠然と「こんな展開になるかなあ」くらいです。

それが裏切られる驚きが大きい程、感動も興奮も増しますね。

大方の観方は、既に名前の挙がった3人、志朗、石井一成、そして現-53kgチャンピオンの大﨑一貴が優勝争いの軸になるという予想でしょうし、小野もそう思います。

3人とも以前から好きな選手ですし、ムエタイベースの技術と、タイでの活躍から注目された「逆輸入型」ファイターでもあります。

まずは志朗

3人の中でもっともムエタイの実績と評価に優るのは志朗です、と言ったら意外な印象を持たれる方もいるでしょうか。

確かに志朗が知名度を上げたのは、那須川天心との2戦をはじめとするRISEでの活躍ではありますが、タイでの評価は安定して高いものでした。

もともとタイでプロデビューし、練習拠点もタイのジムでしたから、純粋なナックモエに近い選手です。

ルンピニースタジアムのTVマッチの常連でしたし、セミファイナルが定席でした。

単純な成績だけなら、連続KO勝ちで注目された一成と一貴、True4Uという興行のタイトルを奪取した一成と、ルンピニースタジアム認定タイトルマッチを経験している一貴が目立つかもしれませんが、毎月上記のようなポジションの試合が組まれるのは、トップ選手として認められていたからです。

タイでは、ベルトや戦績、究極的には実力以外の評価軸が強い傾向があります(その是非は問う意味はありません)。

端的に言えば、お客さんが盛り上がる面白い試合をすること、ましてTVマッチならなおさらです。

とは言え、プロレス的なエンターテイメント性を求められるわけではなく(むしろその要素はかなり低いです)、高い技術力と戦略で盛り上げることが求められます

メジャースタジアムのセミファイナルには実力が伴わない選手なんて皆無ですから、毎月そのレベルで試合が組まれることは凄いことです。

それだけに、3人の中で、日本を主戦場に切り替えたことに最も驚いたのは志朗の時でした。

タイで築いた地位を「捨ててきた」わけですから。

もともとパンチとローの選手ではあるものの、戦略・戦術面でもムエタイの理解度が高く、それだけにRISEルールにアジャストできるのか疑問符付きだったところもあります。

2018年のルンピニースタジアムでの志朗の試合です。

1-2Rはローを主体に崩しながらディフェンスもしっかりし、3-4Rはパンチをヒットさせる展開で流れを引き寄せる。

積極的に首相撲にいく選手ではありませんが、この試合ではヒジ打ちも見せていますね。

そして5Rはディフェンス主体にして「はずす」という、教科書のようなムエタイです。

RISEでは、やはりやりづらそうだなという印象はありましたが、参戦当初はタイ人をはじめ外国人選手との対戦が多く、徐々に適応していきます。

そしてこちらが直近の那須川天心戦。

だいぶ違いますね。

リズムが速くなり、相手が天心だからという要素もあるにせよ、距離が遠くなりました

ムエタイの場合、初めから遠間にいると消極的とみなされますし、強い攻撃を当てて相手を崩し、ディフェンスから反撃をすると高評価を得られます。

RISEでは遠間から速い出入りでのパンチが印象がよく、ムエタイとは逆に「当ててから反撃をはずすor組み止める」スタイルが勝ちに繋がりやすいですね。

言うまでもなく、その最高到達点が那須川天心です。

ムエタイ時代の実績と評価で一成と一貴を上回り、さらにこの3年ほどでRISEルールへの適応を大きく進めた志朗。

と書くと、優勝候補筆頭のように聞こえますが、話はそう簡単ではないと思っています。

まずは体重。

タイ時代は122ポンド、RISEでは55-58kgで闘っていた志朗にとっては、53kgは未知の領域です。

パワーや骨格の優位はあるかもしれませんが、適正体重ではないとも言えます。

ちなみに一成も一貴もタイでは112ポンド、日本では51-53kgを主戦場としてきました。

もっとも、永末”ニック”トレーナーのもと、科学的かつ効率的な減量をする志朗にとっては、この点は大きな問題にはならないかもしれません。

本人のFacebookによると、今回もエキシとは言え前日時点で54kgの身体を作ったようです。

むしろ、一貴や一成の攻撃力とルール適応度が志朗を上回るかどうか、でしょうか。

その石井一成と大﨑一貴

上記の志朗との対比で考えると判りやすいので、合わせて紹介していきます。

けして書くのが面倒になってきたわけではありません。(^_^;)

ムエタイを技術的にも戦術的にも理解した上で結果を残し、RISEでもルールに適応した志朗。

対して、一貴も一成も「もともとの自分のスタイルを崩さずに」ムエタイで連勝し、そしてRISEにやってきました。

この2人は既に大舞台での対戦があるので、動画はそれをリンクします。

大﨑一貴vs.石井一成

ある意味対照的なスタイルですね。

どっしり構え、ゆったりしたリズムで前進してプレッシャーをかける一貴と、速いリズムのフットワークから飛び込む一成

どちらも一撃必倒のパンチを武器としますが、その強打を当てるまでのプロセスはだいぶ異なります。

そして興味深いのは、2人ともタイでの試合を重ねていた時期もスタイルは同じだったことです。

一貴は8連続KOから、時のルンピニースタジアム認定王者キアオに挑み、首相撲に捕らえられて完敗(日本人的な目線では善戦と言えますが、ムエタイとしては大差だったと思います)。

タイトルこそ逃したものの、逆に考えれば、ムエタイ的なリズムと日本キックボクシングの融合したスタイルが本来の姿だと言ってもいいでしょう。

RISEでも参戦早々、政所や田丸といった生粋の日本キック・RISE育ちの選手から勝利を収めて-53kgのベルトを巻いていることは、RISEルールへの適応は既に終わっている、いやむしろ、その必要がないスタイルであることを示しています

以前もレポートしましたが、上背はないものの、前に出るプレスとポジション取りによるディフェンス力も強みです。

脚ではずす、目で避けるスタイルが主流の中、自身のストロングポイントの活かし方をよく理解しているディフェンスの仕方です。

そして一成はタイで6連続KOの上でトップ選手から勝利を収めて、True4Uのタイトルを手にしたことは前述しました。

やはり速いテンポからパンチとローを効かせて試合をまとめました。

そしてそのスタイルは、ルールを問わず現在でも大筋で変わりません。

以前レポートしたNO KICK,NO LIFEでもそうですし、BOMでもそうです。

その2団体でもエース的な位置にいながら、今回はRISEにも初めて挑みます。

しかしながら、速いリズムから高速コンビネーションを仕掛けるスタイルは、RISEには適応しやすいのでは、と思っています。

ヒジがないことは、むしろ一成のスタイルには好都合かもしれません。

麗也にカットを許したのも、パンチに合わされたシーンでした(その後一成もヒジで切り返しています)。

武器を1枚減らすことにもなりますが、パンチで飛び込みやすくなるメリットのほうが大きく感じます。

強いて言えば問題は「ワンキャッチ・ワンアクション」でしょうか。

キャッチング・組んでの攻撃については、K-1系ルールでは全面禁止。

ムエタイでは膠着するまでは全面OK。

RISEはその間に位置すると言えますし、このルールがRISEをRISE足らしめているとさえ言えるのでは、と個人的には思っています(たぶん言い過ぎですが (^_^;))。

「ワンキャッチ・ワンアクション」について具体例として説明するとこうなります。

接近して組みの展開になった時、組んでヒザをひとつ入れるとします。

蹴られた相手は当然蹴り返したいのですが、その前にブレイクされますし、組み返すこともできません。

つまり、組み際の技術の意味がまったく変わってきます。

ムエタイならば、いかに相手が反撃しづらい状況を作って崩し、ヒジヒザを入れるか、またはそうさせないかとなります。

対してRISEでは、近づいたらまずはパンチを当て、反撃に対しクリンチして軽くてもヒザをひとつ入れておけば、ブレイクがかかり、一方的にポイントを作ることができます。

相手を制する技術ではなく、いかに試合の流れを自分有利なタイミングで切るか、というところでしょうか

普段組んでの攻防ありきで闘っている選手は、いくらもともとムエカオ型でないとしても、リズム的に闘いづらくなります。

それは、これまでRISEに参戦してきたタイ人たちを観ていると感じることですね。

さて、DoA-53kgトーナメントの中心となるだろう3選手について、これまでの実績や闘い方、RISEルールへの適応の観点から書いてきました。

もちろん、彼ら以外も実績も実力もある選手が揃いますので、どんな展開になるのかは、組合せも含めて予断を許しません。

前王者田丸、SB西日本屈指の実力者滉大、そして初参戦ながら戦歴ではNo.1の江幡睦(優勝候補に江幡を推す声も多いと思います)、今日勝てば出場が決まる政所仁(一成とは1勝1敗ですね)、TEAM TEPPENから風音(新日本キック王者のHIROYUKIに勝ってます)と、粒ぞろいです。

ムエタイ推しで立てた小野の予想とは全く違う展開になることもありえますね。

(^_^;)

そう言いつつ今日のエキシでは、志朗と一成のRISEルールへの適応度の違いに注目しつつ、ムエタイベースの技術がどれくらい観られるかな、と楽しみです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

おまけ。

一貴と一成は、2人が10代の頃にも対戦歴がありますね。

HOOST CUP FOREVER「石井一成 vs 大崎一貴」

トーナメントで対戦が実現すれば、3度目(アマチュア時代にもあるかもしれませんが)。

ぜひ観たいカードです。

(追記5/17 4度目の対戦とのことです。)

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