観戦レポート 20210307 QP PRESENTS HOOST CUP KINGS KYOTO7 福田海斗

”最先端の総合武道”空道 大道塾 三鷹同好会/Team Tiger Hawk Tokyoの小野です。

第5試合 KING剛 vs. 福田海斗 53.5Kg契約EXルール3分3R(延長1R)

公式サイト

3,7 QP PRESENTS HOOST CUP KINGS KYOTO7 DAY FIGHT 試合結果!
2021,3,7 QP PRESENTS HOOST CUP KINGS KYOTO7 京都KBSホール大会 <メインイベント第6試合54Kg契約3分3R(延長1R)> 〇滉大(及川道場/HOOST CUP日本Sフライ級王者)  VS  ジョムラウィ―・...

カイト・ウォーワンチャイこと福田海斗。以前もBOMNO KICK, NO LIFEの2試合を取り上げました、小野イチオシの日本人ナックモエです。

対するKING剛

強打を持ち味とするMA日本バンタム級王者です。

小野は動いているところは初見でしたので、事前にYouTubeで観ましたが、前進と手数で圧倒する勝ちパターンを持っている選手です。

ちなみに海斗の前戦のレポートで、小野は相手の馬渡についてこのように書いていました。

馬渡亮太も、綺麗なムエタイスタイルで闘う選手で、「ボクシングキック」とも言われる日本キックボクシング界では目を惹かれる存在です。

誤解なきように言っておけば、ボクシングキックでも強くて魅力的な選手は多くいますので、ディスってるわけではありません。(^_^;)

そしてそのテーマを「ムエタイスタイル」とムエタイの違いとしたのでした。

そして今回のKING剛

まさに「ボクシングキック」の典型選手だなあと思ったので、日本人対決での「ムエタイとボクシングキック」はどんな展開になるのかという点で興味深いと思いました。

その構図はルールに現れていますね。

EXルールは、組んでのヒジヒザを解禁したルールのようです。

ムエカオ(首相撲からのヒジヒザの選手)である海斗のムエタイ技術が活かせるルールですね。

正直、このルールで適正階級での、海斗とのオファーを受けたKING剛サイドは凄いと思います。

タイに渡れないため、日本でのファイトを余儀なくされている中、試合がしたくとも相手がなかなか決まらないと、孝也会長も仰っていました。

55kgだと受けてくれる相手もいるようですが、後々減量幅が大きくなるのは避けたいとなると、なかなか難しいところです。

一方、3RであることはKING剛に優位に働きます。

ここは海斗サイドが譲歩したところでしょう。

ムエタイの興行は、当然ですが全て5Rです

(外国人向けは3Rもありますし、メジャースタジアムでも3Rでとの動きはあるようですが)。

従って、ムエタイの闘い方は5Rを通して最終的に自分の手が上がることを目指して構成されます。

一般化すると、よく言われるように

1-2R 相手の出方や戦力を測りつつ、自分の攻め方を試す

3-4R 自分の攻撃をヒットさせ、相手の攻撃はもらわないようにして主導権を握る

5R  勝っていれば「はずす」、負けていれば倒しに行く

という流れですね。

そして、海斗にとっては3Rがよけいに不利になるのは、海斗がムエカオ、首相撲とヒジヒザの選手だからです。

こういうことです。

仮にパンチの選手ならば、1Rから「たたみにかかる」戦術も取りえます。

しかし、首相撲の選手がそれをするのはハイリスクすぎます。

首相撲の技術を知らない外国人選手ならいざ知らず、タイ人同士で、しかも試合が組まれるということは実力差が小さい中での話だからです。

余談ですが、日本を代表するMMA選手の青木真也さんが、10数年前にタイに練習にいき、セーンチャイと首相撲をしたところ、相手にならずに転がされまくったそうです。

ご存じのように、セーンチャイは首の選手ではなく(対ムエカオの勝率は高くないですね)、青木さんは柔道をベースにしたグラップラーで、既にその時修斗の世界タイトルを手にしていた、と記憶しています。

タイ人の首相撲のレベルの高さがよくわかるエピソードですね。

脱線が多いのは、このブログの悪いとこですが(^_^;)、戻します。

首相撲はムエタイの根幹をなす技術体系であり、それは崩し・こかし・投げなどにヒジヒザを合わせた、細かく美しい技術により構成されています。

しかしながら、その大前提となるのはフィジカル面の強さです。

ムエカオとしては身長が高いことも有利ですが、むしろ相手を抑え込む力の強さと、頑丈さのほうが重要ではないでしょうか。

技術はその上に成り立っています。

首相撲はタイ語では「プラム」=「力比べ」という意味だそうですが、そう考えると首「相撲」という訳語はニュアンスとしては当たってますね。

さて、長々と首相撲について書きましたが、5Rの試合でいきなり「力比べ」から入るのはハイリスクなことは、容易に想像がつきます。

1-2Rは相手もスタミナ充分で動けます。

組むために接近する際に、強い攻撃をもらうかもしれません。

よって、ムエカオは前述した一般的な試合の流れに、より強く従わざるを得ないことになります。

序盤は相手との距離をつかみ、相手が多少なりとも息が上がり始める中盤に、捕まえにいって組んで体力の消耗を誘い、ヒジヒザでフィニッシュするか主導権を握る、というパターンで闘うことになるわけです。

やっと本題に戻りますが(^_^;)

海斗が技術力・実力では優るとは思いましたが、3R制ではリスクを取って序盤から攻め込まないと、主導権を取るころには試合終了してしまいます。

ボクシングキックタイプのKING剛相手では、なおさら3R制が勝負を左右する可能性もあったということです。

さて、試合開始です。

1R トレーラーで「バチバチに打ち合いを」と言っていたKING剛ですが、真逆の戦術を取ります。

かなり距離を遠く取り、速い出足で飛び込んで一発狙いを徹底します。

このぐらい遠くに立ち、回り込みながらコツコツ攻撃を出していました。

これはトレーラーも含めた戦略だったのでしょう。

3R動き回って首相撲に捕まらず、ロングからローで動きを止めパンチを当てて倒す、ということですね。

小野がKING剛サイドにいたら、やはりその戦術を選んだのではないでしょうか。

それ以外攻略が難しいほど、ムエタイルール(に近いルール)での海斗のレベルは高いのです。

それは、前戦の馬渡戦でも証明していたと思います。

立ち上がりは、KING剛が作戦通りの動きをしたのではないでしょうか。

前述したように、ムエカオである海斗が3Rで勝つためには、リスクを冒してでも近づいて組む展開が理想です。

しかし、足を使って遠くにいる相手に対しては、なかなかそれが叶いません。

仮に5Rあれば、1-2Rは好きなだけ動いてもらい、勝手に疲れてくる以降にじっくり捕まえればいいのですが、ムエタイなら勝負に行く3Rにも相当する時間帯、海斗も焦りはあったでしょう。

KING剛はサウスポーであることも利用して、距離を作っていました。

終盤で右ミドルの距離が合ってきたかな、というところでゴング。

2R 海斗がプレッシャーを強めます。

ティープ(前蹴り)、右ミドル、テンカオ(組まないヒザ)で、KING剛は消耗していったように感じました。

テンカオから右ヒジを合わせてカットにも成功します。

だいぶ警戒されていたように見えましたが、それでも、です。

このヒジですね。

逆に、徐々に体力を削られながらも動いてチャンスを作ろうとし続けたKING剛も、いい選手だなと思いました。

普段のスタイルと異なる闘い方で、実力が上の相手と向き合い続けるのは、ものすごく大変なことです。

一発逆転の左オーバーハンドやバックハンドなどの大技と、コツコツとローの組合せで抵抗します。

組まれると、横向き後ろ向きになってブレイクを呼び込みました。

これは馬渡もしていた動きで、タイなら勝負ありになってしまう可能性もありますが、日本ならば「印象は良くない」程度で済みます。

ヒジヒザで倒されたり投げられて消耗するよりはいい、という戦術でしょう。

こんな体勢ですね。

それでも試合は確実に海斗の展開になっていきます。

ラスト30秒、右ヒジでKING剛をダウンさせましたが、角度的にレフェリーからヒジが見えなかったかもしれません。裁定はスリップ。

このヒジです。コーナーポストとサンドイッチにされるエグいもらい方です。すぐ立ったのは驚きました。

右ヒジを警戒させておいて左の縦ヒジなど、一方的に攻め立ててゴング。

3R KING剛の足が止まる場面が目立ちます。

前述の通りで、ギリギリの緊張感で離れた距離から飛び込み、それにも対応されてパンチのカウンターやテンカオ、組みの展開により、KING剛の体力はだいぶ削られたのだろうと思います。

ヒザとヒジのダメージもかなりあったのではないでしょうか。

後半は組まれると投げられる場面も増えました。

それでも手数は出していたので、ホントにガッツのあるいい選手です。

海斗は左ストレートをもらい顔が上がる場面もあるものの、体勢が崩れることはなく、試合終了です。

判定は。

ジャッジ3者ともに海斗にフルマークをつけて、海斗の勝ちとなりました。

正直かみ合った展開ではなかったとは思います。

お互いがお互いの持ち味を出そうとし、何より勝ちにこだわった結果でしょう。

もしかすると、格闘技を詳しく知らない人が観たら、手数の多かったKING剛の勝ちでは? と思われるかもしれません。

しかし、動いてパンチを出していたKING剛よりも、試合をコントロールしてヒジも効かせていた海斗の勝利に間違いありません。

KING剛本人が一番判っているはずです。

先日のONEチャンピオンシップのスーパーレック戦のジャッジチームが採点していたら、KING剛の勝ちもあったかもしれません、と言うと皮肉すぎますかね。

(^_^;)

ムエタイとボクシングキックは、やはり交わるのは難しいのかもしれません。

それでも、お互いの意地とストロングポイントを出したいい試合だったと思います。

海斗の次戦は来月のBOM。相手は大崎孔稀です。

ムエタイ/キックボクシングファンの必見カードですね。

どんな展開になるのか、考えるのも楽しみです。

さて、今回はライブ配信がなかったのですが、翌日には公式YouTubeチャンネルにて試合映像が公開されました。

とても嬉しく、大事なことだと思います。

また脱線ですが、HOOST CUPの土居龍晴代表は、元大道塾所属で、小野の先輩にあたります

小野が駆け出しの頃にトーナメントで対戦し、パンチ技術で遊ばれて負けたことをよく覚えています。

(^_^;)

元気な姿を拝見できて嬉しかったのも、今回の(勝手な)成果でした。

お読みいただきありがとうございました。

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